ネットワーク監視、IT インフラ監視のために監視ツールを利用している多くの IT 部門で、利用中のネットワーク監視ツールの見直しが検討されています。監視ツールとして SolarWinds を利用している場合、置き換えの最適な候補は WhatsUp Gold です。IT 部門にとっては、パフォーマンスや柔軟性に加え、コストや運用面での効率性も重要な検討項目になります。このブログでは、SolarWinds から WhatsUp Gold への移行を検討する際に役立つ、移行の手順や両製品の主な違い、移行を円滑に進めるためのポイントを解説します。
ステップ1: 認証情報の整理
WhatsUp Gold でデバイスの検出や監視を開始する前に、SolarWinds Orion で使用している認証情報の構成を整理し、同様の設定を用意する必要があります。
- SolarWinds Orion からの認証情報のエクスポート: Orion の管理インターフェースを使用して、SNMP コミュニティ文字列、WMI 認証情報、SSH キー、カスタムのログイン情報を抽出します。[Settings] → [All Settings] に移動し、[Main Settings & Administration] ページ内の [Credentials] セクションから、Windows、SNMP、API ポーラー用の各認証情報を確認してください。
- WhatsUp Gold への登録: WhatsUp Gold の [設定] → [ライブラリ] → [認証情報] に移動し、各種認証情報を登録します。WhatsUp Gold は、SNMP、WMI、SSH、REST API など、複数の認証方式に対応しています。

💡メモ: WhatsUp Gold では、認証情報を一元管理し、デバイスの検出スキャン、各種モニタ、アクション間で再利用できます。デバイスごとに認証情報を再入力する必要はありません。
ステップ2: IP アドレスの検出
WhatsUp Gold に認証情報を登録したら、次はネットワーク上のデバイスを検出します。
- SolarWinds Orion から IP アドレスをエクスポート: すべてのノードの定義済みレポート、またはカスタムレポートを使用して一覧をエクスポートします。エクスポート結果から IP アドレスをコピーしてください。

- WhatsUp Gold で検出を実行: [検出] → [新しいスキャン] に移動し、IP アドレスの一覧を貼り付け、適切な認証情報を選択します。
WhatsUp Gold のウィザード形式による検出機能では、デバイスの自動マッピング、デバイステンプレートの割り当て、動的なトポロジーマップの作成が行われます。デバイステンプレートは、用途や環境に応じて容易にカスタマイズできます。 WhatsUp Gold の UI では、ノードはデバイスとして扱われ、検出済みネットワークと監視対象ネットワークの 2 つの領域に分けて管理されます。また、WhatsUp Gold では複数のスケジュール検出を設定できるため、異なるネットワークセグメントを対象に、時間帯を分けて継続的なスキャンを実施することが可能です。検出後、管理者は、デバイスを監視対象ネットワークに追加するかどうか(自動的に追加するかどうかも含め)を選択できます。監視対象として追加する場合はライセンスが必要です。「監視されていないデバイス」は、監視対象に追加されていなくても、トポロジーマップおよび検出済みネットワークの一覧上で確認できます。
ステップ3: アラートとアクションの移行
このステップでは、移行作業がやや複雑になります。SolarWinds Orion のアラート機能はモジュール化されており、SAM、NTA、NCM などのアドオンと連動して設定されているケースが一般的です。一方、WhatsUp Gold ではアラートの考え方や構成は異なりますが、柔軟かつ高機能な仕組みが提供されています。
- SolarWinds Orion のアラートを確認: 重要なアラート、しきい値、実行されるアクション (例:メール通知、スクリプト実行) を整理します。
WhatsUp Gold で再構築: アラートセンターとアクションポリシーを使用して、同等の設定を作成します。WhatsUp Gold では、以下のようなアラート方式がサポートされています。
- 収集したパフォーマンス監視データに基づく、しきい値ベースのアラート (アラートセンター)
- アクティブ監視で収集したデータの状態変化をトリガーとするアラート (アクションとアクションポリシー)
WhatsUp Gold のライブラリ方式では、アラート機能の作成や管理を効率的に行うことができます。多数の組み込みタイプから選択でき、その中には、ほぼあらゆるアラート通知や自動化要件に対応するカスタムアクションを作成することが可能な PowerShell を利用したアクションも含まれています。
📌例: SolarWinds Orion で、インターフェース使用率が 80% を超えたらアラート警告を出すよう設定していた場合、WhatsUp Gold では、インターフェース利用率のパフォーマンスモニタと、アラートセンターのしきい値設定および通知ポリシーを組み合わせることで、同様のアラートを設定できます。

ステップ4: レポートとダッシュボードの再構築
SolarWinds Orion の PerfStack 分析や各種ダッシュボードは高機能ですが、詳細なカスタマイズには多くの工数を要する場合があります。WhatsUp Gold では、直感的に操作できるカスタムダッシュボードが提供されており、豊富な組み込みウィジェットライブラリを活用できます。
- SolarWinds Orion の主要レポートを整理: 必須となるレポートを洗い出します。例えば、トップトーカー、稼働率、帯域使用状況、デバイスの健全性などが該当します。
- WhatsUp Gold でレポートおよびダッシュボードを作成: WhatsUp Gold に組み込まれているすべてのレポートは、ダッシュボード用ウィジェットとして利用できます。標準ダッシュボードでは一般的な監視シナリオを網羅していますが、必要に応じて、情報量を調整しながら任意の数のダッシュボードを作成することも可能です。
レポートはドラッグ&ドロップで任意の位置に配置できるほか、直接追加することもできます。

WhatsUp Gold には、[ホーム] と [デバイスステータス] という2種類の主要なダッシュボードがあり、環境全体を対象としたビューや、特定デバイスに特化したビューをそれぞれ構成できます。すべてのダッシュボードは [分析] → [ダッシュボード] から利用できます。また、[NOC Viewer] ダッシュボードを使用すると、大型ディスプレイに WhatsUp Gold の情報をスクロール表示でき、これも高度にカスタマイズ可能です。

ステップ5: 監視カバレッジの検証
移行完了後は、WhatsUp Gold が SolarWinds Orion で監視していた対象を漏れなくカバーしているか、またそれ以上の監視が行えているかを確認します。
- WhatsUp Gold の デバイスロールと検出インテリジェンスを活用して、必要なカスタム監視をすべてのシステムに自動的に適用します
- 通知内容を比較し、差異や不足があれば適宜調整します。
以上、ステップ1の準備からステップ5の検証まで、移行の手順を説明しました。確認したい点などがあれば、弊社までお問い合わせください。
SolarWinds Orion から WhatsUp Gold への用語対応表
SolarWinds Orion の用語および各モジュールを WhatsUp Gold の機能や概念に対応付けるための包括的な対応表を、以下にまとめました。
| SolarWinds Orion の用語 | 対応する WhatsUp Gold の用語 | 注意事項 |
|---|---|---|
| Node | デバイス | WhatsUp Gold Premium エディションでは、デバイス・ベースのライセンス体系を採用しています。 |
| Element (Interface, Volume, Node, Universal Device Pollers) | モニタ | WhatsUp Gold デバイスごとに無制限のモニタを設定できます。 |
| Server and Application Monitor (SAM) | アプリケーション監視 | SNMP/WMI ベースの監視を行います。追加モジュールは不要です。WhatsUp Gold アプリケーションパフォーマンス監視アドオンには追加のアプリケーション・テンプレートやレポート機能が備わっています。 |
| Network Configuration Manager (NCM) | 設定管理 | WhatsUp Gold は、デバイスに割り当てられた認証情報を使用した、統合型のネットワーク設定管理、設定バックアップ機能を提供します。 |
| NetFlow Traffic Analyzer (NTA) | ネットワークトラフィック分析プラス (NTA+) | WhatsUp Gold のクラス最高水準のネットワークトラフィック分析により、NetFlow、sFlow、その他のフローデータタイプに関する実用的な詳細情報を得ることができます。 |
| Log Analyzer/Log Manager | ログ管理 | WhatsUp Gold は、Syslog および Windows イベントに対応したログ管理機能を利用でき、強力なアーカイブ機能も提供します。 |
| Orion Maps, Network Atlas, Intelligent maps | デバイスグループのマップビュー | WhatsUp Gold は、自動化され、統合され、カスタマイズ可能なレイヤ 2/3 のトポロジーマップを提供します。ドリルダウンやオーバーレイ表示にも対応しています。 |
| Advanced Alert Manager | アラートセンター、アクションポリシー | WhatsUp Gold は、パフォーマンスのしきい値に基づくアラートにはアラートセンターを使用し、可用性に基づくアラートにはアクションポリシーを適用します。 |
| PerfStack/Orion Dashboard | ホームダッシュボード、デバイス状況ダッシュボード | WhatsUp Gold のダッシュボードはユーザーごとにカスタマイズ可能で、共有、エクスポート、スケジュール設定にも対応します。必要に応じて、いくつでもメトリクスを簡単に追加できます。 |
| Network Sonar Discovery | 検出ウィザード | WhatsUp Gold の検出機能は、SolarWinds と比較して、柔軟性がより高く、自動化オプションも優れています。 |
| Reports | レポート | WhatsUp Gold には多数の事前設定済みレポートが組み込まれています。ダッシュボードに表示するだけでなく、メールでの定期配信やファイルへの保存も可能です。WhatsUp Gold 360 ではカスタムレポートビルダーを提供します。 |
| SolarWinds Information Service (SWIS) | REST API | WhatsUp Gold の API サポートは、SolarWinds と比較して、IT エコシステムとのより緊密な連携を実現できます。 |
| Node Management > MIB Browser | SNMP MIB Walker、SNMP マネージャ | WhatsUp Gold のクラス最高水準の SNMP ツールで、SNMP MIB の参照やウォークが可能です。SNMP ベースの値に対してモニタを簡単に作成できます。 |
| Maintenance Mode | スケジュールされたメンテナンス | WhatsUp Gold のメンテナンススケジュールは、選択した多数のデバイスに対して一括で適用できます。 |
| Custom Properties | デバイス属性 | WhatsUp Gold のデバイス属性を利用して、メタデータを用いたデバイスの手動および自動タグ付けが可能です。 |
| HTTPS Monitor (SAM) | SSL 証明書監視 / HTTP コンテンツ監視 | WhatsUp Gold には、これらの監視が標準モニタとして搭載され、追加モジュールを必要とせずに、すぐに利用できます。 |
| IPAM (IP Address Manager) | (外部ツールが必要) | WhatsUp Gold にはネイティブの IPAM 機能はありません。必要なら、Microsoft IPAM や Netbox のご利用を推奨します。 |
| Virtualization Manager (VMAN) | 仮想環境監視 | WhatsUp Gold は、標準機能でハイパーバイザーを監視できますが、アドオンの仮想環境監視ツールを追加すると、Hyper-V および VMware の API と緊密に連携できます。 |
| Storage Resource Monitor (SRM) | (対応機能なし) | 多くのストレージベンダーに対して、WhatsUp Gold の SNMP アクティブ/パッシブ監視を標準機能で利用できます。さらに、WhatsUp Gold の REST API モニタを使用して、様々なストレージシステムと連携することが可能です。 |
| Maintenance Mode | メンテナンス・モード | 監視を、一時的に、またはスケジュールに基づいて、行わないようにすることができます。WhatsUp Gold では、デバイスに対してメンテナンススケジュールを一括で適用することもできます。 |
SolarWinds から WhatsUp Gold への移行の理由
実際に SolarWinds から WhatsUp Gold に移行されたお客様の事例や、社内フィードバックから、以下のようなポイントが WhatsUp Gold への移行の理由であることがわかりました。
- ライセンスのシンプルさ: デバイス・ベースの価格体系は価格対効果比が高く、好感されています。隠れたコストもありません。
- 迅速な価値実現: 1時間程度で活用可能なデータを取得できます。
- コスト削減: SolarWinds Orion のネットワーク監視システムは高額で複雑です。
- 優れたサポート: WhatsUp Gold のサポートは対応が速く、高度な技術力を備えています。
まとめ
SolarWinds Orion から WhatsUp Gold への移行は、単なる技術的な変更ではなく、戦略的なアップグレードです。適切な準備を行えば、移行はスムーズで、効果もすぐに実感できます。経験豊富なネットワーク管理者にも、小規模な IT 部門に対しても、柔軟性、可視性、そしてシンプルさを提供する WhatsUp Gold は、大きな価値をもたらします。